デイビッド・ロックフェラー・ジュニアさん(ロックフェラー・キャピタル・マネジメント・ディレクター) | 藤田美術館 | FUJITA MUSEUM

藤田美術館は2022年4月にリニューアルオープンします。

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ART TALK

デイビッド・ロックフェラー・ジュニアさん
(ロックフェラー・キャピタル・マネジメント・ディレクター)

ART TALK_04 | アートと教育

ART TALK_04 | デイビッド・ロックフェラー・ジュニアさん (ロックフェラー・キャピタル・マネジメント・ディレクター)

 

MoMA(ニューヨーク近代美術館)やメトロポリタン美術館のサポートを行っているロックフェラー家の一員として、ロックフェラー関連の団体や芸術、教育、環境を支える非営利団体で多くの重要な役職を歴任し、アートへの造詣も深いデイビッド・ロックフェラー・ジュニアさん。子どもから大人まで多くの方にアートに親しんでもらうためのプログラムや若い世代への情報発信など、これからの美術館の存在意義や担うべき教育のあり方について、ニューヨークのロックフェラー・センターで語り合いました。

 

 

古い一枚の写真からつながった

 

デイビッド・ロックフェラー・ジュニア(以下ロックフェラー) 私の祖父が藤田家を訪ねた写真が前から気になっていて、機会があればぜひ藤田さんを訪ねたいと思っていました。

 

藤田 清(以下藤田) これは藤田傳三郎の息子、平太郎です。私の曾祖父の兄に当たります。写真は1921年に撮影されたものですね。

 

ロックフェラー ファミリーで中国へ行く前に日本に寄った時に、藤田さんが日本でも有数のコレクションを所蔵していると知って訪ねたと聞いています。ロックフェラー家は代々日本文化に興味をもっていて、そのときも様々な貴重なコレクションを拝見したのでしょう。考えただけでもワクワクします。

 

藤田 これは貴重ですね-

 

ジョン・D・ロックフェラーJr.(後左2番目)、藤田平太郎(後左3番目)    藤田邸(大阪)
ジョン・D・ロックフェラーJr.(後左2番目)、藤田平太郎(後左3番目)    藤田邸(大阪)

画像提供:Rockefeller Archive Center

 

ロックフェラー ロックフェラー家は以前からMoMAやメトロポリタン美術館のサポートを行っていますが、藤田家も美術館を開設するなど、アートへの取り組みという点で、両家は共通しているところが多いと思います。

 

藤田 そうですね。日本では、明治初頭(1870年代)多くの美術品が海外へ流出していました。藤田傳三郎は、何れ混乱が落ち着いたとき、国の宝として重要な役割を担うときが来ると考え、私財を投げ打って収集に努めたのです。この想いが受け継がれ、たくさんの人が鑑賞できるようにと美術館が創立されました。

 

ロックフェラー とても素晴らしい考えだと思います。ところで、藤田美術館は新しく建替えをすると聞きましたが、その後進捗はいかがですか?

 

 

展示だけではない新しい美術館の構想とは

 

藤田 概ね建築設計がまとまり、つい先日、着工しました。2022年春の開館を予定しています。

 

ART TALK_04 | デイビッド・ロックフェラー・ジュニアさん (ロックフェラー・キャピタル・マネジメント・ディレクター)

 

ロックフェラー それは楽しみですね。どなたの設計なのですか?

 

藤田 著名な建築デザイナーに任せては、という声もあったのですが、主役は美術品です。長きに渡って美術品を守ってきた蔵は、藤田美術館の象徴でしたので、この「蔵」を表現することに注力してきました。設計に2年以上かかってしまいましたが・・・

 

ロックフェラー それは非常に興味深いですね。具体的にはどのような計画になっているのですか?

 

藤田 一つは、古い蔵の扉をそのまま活用することです。新しい美術館のシンボル的な存在になるでしょう。設備が刷新され通年開館が可能になるので、いつでもご覧いただけます。

もう一つは、オペレーションの工夫です。広場と呼ぶ展示室前のオープンスペースを自由に利用して、日本美術や文化をより近くに感じられるよう、様々な活動を展開したいと思っています。

 

ロックフェラー それは意義のある活動ですね。どのようなことをされる予定なのですか?

 

藤田 例えば、お茶の体験や、陶芸作家や伝統工芸品の実演、大人も子供も参加できるワークショップなどです。「ふれて、感じて、つながれ」をコンセプトに、世代やジャンルを超えて沢山の人とつながれば、地域の活性化に貢献できたり、将来を担う若い人達の役に立ったり、そういう場所でありたいです。

 

ロックフェラー その中で教育プログラムも行っていきたいと前にお聞きして、MoMAの教育プログラムの責任者をご紹介しましたが、そのミーティングはいかがでしたか?

 

藤田 有り難うございました。とても勉強になりました。MoMAの教育プログラムは、対象者のニーズに合わせたコンテンツを提供していたのが印象的でした。例えば、若者が相手なら、彼らが好みそうな音楽やダンスを企画したり、運営サイドから歩み寄るというのは、参考になりました。

 

 

ますます重要になる美術館の取組み

 

ART TALK_04 | デイビッド・ロックフェラー・ジュニアさん (ロックフェラー・キャピタル・マネジメント・ディレクター)

 

ロックフェラー アメリカももともとキュレーターの立場が上で、その下に教育者がいるという構図だったのですが、今ではキュレーターと教育者の立場が同等になってきています。いかに教育を重要視しているかという現れでもあると思います。そういう意味でも藤田美術館が教育も視野に入れているというのはとても重要だと思います。私は美術館のプロではないのですが、2回ほどMoMAの教育委員会の理事長も務めて教育部門の担当をしました。そこでまず私が感じたのは、普通の方が美術館に来られると、緊張したり、ちゃんとした着こなしをしないといけないんじゃないかと思ったりすることがとても多かったことです。MoMAはもっと身近にアートを楽しんでもらえるように、カジュアルでいいという雰囲気をだそうとしました。例えば、美術館の中に小さなレストランを設けたり、スタッフが気軽にあいさつをしたり、そのようなことを心掛けていましたね。

 

藤田 先程お話しした、展示室前のオープンスペースを上手く使って、今まで美術に興味がなかった人たちも呼び込みたいと考えています。私たちにとっては新しい試みですが、人が集まること、誰もが興味をもって気軽にアートに触れられることを考え続けています。MoMAの方々も興味のない人たちを引きつけるために、色々なチャレンジをしているなぁと思いました。

 

ART TALK_04 | デイビッド・ロックフェラー・ジュニアさん (ロックフェラー・キャピタル・マネジメント・ディレクター)

 

ロックフェラー MoMAは近代から現代のコレクションが中心なので、今の方々に今まさに起こっているアートをお伝えすることが私たちの仕事だと思っています。それに対して、藤田美術館は古いコレクションが中心で、新しいこれからの世代に昔のものを伝えるということが課題なんでしょうね。

 

藤田 そうですね。展示室では伝統的な文化や芸術を見せ、オープンスペースでは、コンテンポラリーなものも表現し、幅広い世代の方に興味を持ってもらえるといいなぁと思っています。

 

ART TALK_04 | デイビッド・ロックフェラー・ジュニアさん (ロックフェラー・キャピタル・マネジメント・ディレクター)

 

ロックフェラー 先日、日本を訪ねたときに美術館に行ったのですが、そこでは京都から借りてきた色々な古い所蔵品などを展示してありました。美術館自体は近代美術の美術館なのに、近代だけではなく、昔のもの、伝統のあるものを補完的に見せているということがとても興味深かったです。ここから新しい会話が生まれることにもつながるのではないかと思います。また、どのようにして情報を提供していくかということも大きな課題となるのではないかと思います。若い世代の方々がどのような興味を持っているか、そして、どのように美術館の情報を得るのか。ホームページだったり、YouTubeだったり、またそういうビデオから写真から何もかもが可視化されて、その情報量がものすごく大きくなっていくなか、美術館自体を訪れる意味も考えていく必要があると思います。その中でMoMAなどもその取り組みに力を入れていて、先ほどおっしゃっていただいたようなプログラムを作って、様々な形のアートであったり、ダンスなどを積極的に取り込んで企画をしています。新しい美術館のオープンまで3年間あるというのはとても素晴らしいことだと思います。建物を作ることももちろんそうですし、その建物がどのように機能するのかということもじっくりと考えることができると思います。そして、お客様に試しに何か行ってみるということもできるのではないかと思います。

 

藤田 そうですね。色々チャレンジして行きたいです。またご意見を聞かせてください。今日は本当に有難うございました。

 

ロックフェラー こちらこそ。私たちの関係は3代前からの長い歴史があるのでこれからも藤田家・ロックフェラー家引き続き仲良くしていきましょう。また2022年はとても大切な年になりますね。オープンの時にはぜひお邪魔したいです。

 

藤田 はい。お待ちしています。

 

ロックフェラーセンターのクリスマスツリーの歴史を語るロックフェラーさん
ロックフェラーセンターのクリスマスツリーの歴史を語るロックフェラーさん

 

 

デイビッド・ロックフェラー・ジュニア
長年のビジネスマンであり慈善家で、ロックフェラー関連の団体や芸術、教育、環境を支える非営利団体で多くの重要な役職を歴任。現在はロックフェラー・キャピタル・マネジメントの取締役会のディレクターを務める。またアートの熱心な支持者としてアジア文化会議や近代美術館の評議員、芸術科学アカデミーのフェローを務める。近年は「ストーンハウスグレイン」にて農地の所有・管理、再生農業、若い農家への支援や、「セーラーズ・フォー・ザ・シー(SfS)」にて環境保全の取組みにも積極的に行なっている。

 

藤田清(ふじたきよし)
1978年藤田傳三郎から数えて5代目にあたる藤田家五男として神戸に生まれる。大学卒業後、2002年に藤田美術館へ。2013年に館長に就任。現在は、美術館リニューアルに向けて準備中。

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