2023.11.29
朝鮮半島の民窯で焼かれた日常雑器は、室町時代後期の日本に持ちこまれると、当時の茶人たちに素朴さを愛玩され、茶碗に見立てられるようになります。このような高麗茶碗(こうらいちゃわん)のなかで最も格式高いとされたのが井戸茶碗で、特に大振りなものは大井戸茶碗と呼ばれます。この茶碗は、枇杷(びわ)色の釉、貫入(かんにゅう)と呼ばれる細かいひび、竹節状の高台、外側の轆轤(ろくろ)目など、大井戸の特徴をよく備えています。整った造形と渋い釉色からは、どっしりと安定した印象を受け、山河を示す銘の由来を感じられます。茶道具の格付けのひとつである中興名物(ちゅうこうめいぶつ)に数えられています。
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