2023.11.29
手前に広がる三保松原から、駿河湾の向こうに富士山を望む雪景色を描いています。空には月が浮かび、淡く藍色が刷かれています。雪の白さと月の明るさは、絹の地色を塗り残して輪郭の外側を隈取ることで描出されます。全体に簡略な筆ながら、水面に映った月明かりや雪が積もる松の陰影などを巧妙に表現しています。
塩川文麟(1808~1877)は四条派の絵師で、幕末から明治初めの京都で活躍しました。呉春(ごしゅん、1752~1811)を祖とする四条派は、与謝蕪村の軽妙な筆致と円山応挙の重視した写生を融合した画風をもちます。
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