暮春花色紙

2024.02.24

暮春花色紙

『古今和歌集』に載る、三十六歌仙の一人・凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)の歌が書かれています。延喜13年(913)4月に、宇多(うだ)法皇が自分の御所である亭子院(ていじのいん)で開いた、和歌の優劣を競い合う風流行事で詠まれた歌です。花のもとから立ち去りがたい春の終わりの日の心情が詠まれています。

 平安時代中期の歌人・藤原公任(966~1041)による書と伝わり、もとは巻物だったものが、切り分けられて掛軸にされたと考えられます。紙には一面に、粉末状の雲母を膠(にかわ)で接着させる技法で菱形唐花唐草文様があらわされています。華やかな料紙に、枯淡な味わいの散らし書きが映えています。

 

けふのみとはるをおもはぬ

  ときたにも立つこと

       やすきはなの

           影か

             ハ

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