印籠

いんろう

medicine case with lacquer

柴田是真(しばたぜしん)

江戸~明治時代 19世紀

印籠は薬など小さいものを携帯するための容器です。紐を帯に挟み、先端についている根付(ねつけ)を留め具として用いました。

御簾(みす)のかかった窓をとおして部屋の中を眺める意匠になっています。机の上には紙や硯、筆が置かれ、手前にある秉燭(ひょうそく)という照明器具には火が灯っていることから、何かを書いていた人が机を離れたわずかな時間を切り取ったと考えられます。根付は楽器があらわされた唐墨を模しており、印籠のモティーフと併せて文房具が揃う趣向となっています。印籠の裏側にはスギと思われる植物があらわされます。印籠とともについているのは巾着(きんちゃく)で、小物を入れるためのものです。印籠の底部と根付に「是真」という作者の銘が刻まれます。柴田是真(1807~1891)は幕末から明治時代にかけて活躍した漆芸家で万国博覧会に出品し受賞するなど、当時の日本を代表する芸術家の1人でした。