重文 大伴家持像(上畳本三十六歌仙切)

おおとものやかもちぞう(あげたたみぼんさんじゅうろっかせんぎれ)

Otomo no Yakamochi

鎌倉時代 13世紀

三十六歌仙のひとり・大伴家持(718頃~785)を描いています。かっちりと強張った線の衣は、平安後期以降の公家男性が着た、糊付けされて張りのある強装束(こわしょうぞく)を表します。どんな姿だったか分からない奈良時代の万葉歌人である家持を、当世風に描いたと考えられます。画面の右側には官位、姓名、略歴、和歌一首が記されています。

三十六歌仙とは、藤原公任(ふじわらのきんとう、966~1041)が選んだ優れた歌人のことです。「写実性」を重んじる鎌倉時代には、本人に似せて描く肖像画「似絵(にせえ)」が流行ります。そこから派生して、三十六人の肖像を描く三十六歌仙絵が多く作られました。この家持像の、眉や髭など顔のパーツに細い線を引き重ねる技法などは「似絵」から取り入れられています。

もとは絵巻だったと考えられますが、少なくとも江戸時代までには切り離され、現在は16図が残っています。歌仙たちが上畳に座る姿で描かれるため『上畳本』と呼ばれています。

 

中納言従三位家持

 春宮大夫大伴家持大納言旅人男鎮

 守府将軍

 さをしかのあさたつをのゝあきハきを

 たまとミるまてをけるしらつゆ