中国・元時代の画家、顔輝(がんき、生没年不詳)筆と伝承される十六羅漢図ですが、近年の研究により、画風からおよそ100年後の明時代に制作されたと考えられています。羅漢は「阿羅漢(あらかん)」ともいい、釈迦が亡くなる時、現世に留まり正しい教えを護り伝えることを託した釈迦の弟子たちのことを指します。中国・唐時代(10世紀頃)以降、羅漢信仰が流行して、その姿を絵画や彫像としてあらわすようになりました。
それぞれの絵には緑色の箱が描かれています。向かって左側の絵では、蓮華文が彫刻された箱に経典が納められており、もう一方の絵では、金彩で唐草文様があしらわれた箱を羅漢の従者がささげもっています。絵から材質は判別できませんが、様々な用途で使われていたようです。
羅漢図を納める箱には、室町幕府6代将軍・足利義教(あしかがよしのり、1394~1441)が中国から取り寄せ、東大寺戒壇院に寄贈したと記されています。