重要文化財 春日明神影向図

かすがみょうじんようごうず

[Important cultural property] Manifestation of the Kasuga Myōjin

高階隆兼(たかしなたかかね)

正和元年(1312)

青色の濃い霞の中、低木や秋草が生える庭に牛車が一輌たたずんでいます。その戸口には、束帯(そくたい)を着た春日明神が姿をのぞかせていますが、顔は霞に覆われて見えません。牛車の下には、月光をおもわせる銀泥がほどこされた地面が広がっています。関白・鷹司冬平(たかつかさふゆひら、1275~1327)が、自邸を訪れた春日明神から書物を手渡される夢を見て、その内容を宮廷絵師・高階隆兼(たかしなたかかね)に描かせました。その経緯が、下部に貼り付けられた、正和元年(1312)9月に記した冬平自筆の文書によって明らかになっています。上部には、むかって右から釈迦如来、薬師如来、地蔵菩薩、十一面観音菩薩、聖観音菩薩の順に5体の仏が円相(えんそう)の中に描かれています。これは、仏が人々を救うために神の姿を借りてあらわれるという思想に基づき、春日の神々も仏の姿であらわされています。